卒業式と入学式で会長が祝辞

  神代高校第69期の卒業式が3月5日に、28年度新入生の入学式が4月7日に、いずれも調布グリーンホールで行われました。  祝典では銀杏会の藤森精太郞会長も祝辞を贈りました。

【2017年3月5日(日)卒業式会挨拶】

 皆さんこんにちは、銀杏会の藤森です。高校69回目の卒業になる皆さんに若干のエールを送りたいと思います。
 私が卒業したのは17回ですから、52年前になります。3年間の思い出はたくさんありますが、1964年の東京オリンピックの思い出は強烈でした。バレーボール、レスリング、マラソン、柔道、重量挙げなど当時の興奮がどっと蘇ります。中でもマラソンは折り返し点が甲州街道の、今の味の素スタジアム前ということもあり、母校からそこまで行って応援しました。日本選手に表彰台に上がって欲しいと願っていたので、円谷幸吉選手が3位になった時は本当にうれしくて涙が出るほどでした。以来私はマラソンが好きになり、ずっと応援しています。最近はケニアなどアフリカ勢に押され気味ですが、今度のオリンピックでは日本選手の健闘を祈っています。
 人生はよくマラソンにたとえられます。マラソンは42.195㌔㍍という長い距離の中で凝縮されたドラマが展開されます。山あり谷ありのレースの中に埋もれてしまう者もいれば、上手にペース配分してゴールを目指す者もいます。持久力とスピードがうまく調整できた者が勝利をつかみます。そこには日ごろの練習から蓄えられた知恵があります。その力をうまく使いこなしたものが勝負を決めるのです。根性や気合も大事ですが、それは科学的な練習を根拠としてなしあげた人が最後に踏ん張るべき領域だと思います。
 皆さんが目指すべき人生のゴールも、そうした努力の結果の先にあります。しかし、マラソンと違ってゴールは1つではなく、いくつもあります。しかも、すぐには表れません。途中に大きな転機があり、私にも転機がありました。いまは介護という仕事を通じて、今日ここに立っています。介護という仕事も大変です。今朝も1件、8時半から1時間半の仕事をこなして来ましたが、毎日が同じということはありません。相手が人である以上、何が起こるかわかりません。昨日全く動けなかった人が、今日は元気に歩いているということもよくある話です。それに臨機応変に対応しなくては勤まりません。あるお婆さんがいます。その方は転んで動けなくなってしまい、いつもベッドで「死にたい、死にたい」と言っています。でも週2回だけ施設の入浴に出かけます。アパートの2階から降りて送迎バスに乗るのですが、その途中で「死んじゃうよ、死んじゃうよ」と言って階段の手すりをつかもうとします。その力の強いこと。「さっきまで死にたいと言ってたじゃん」と言うと、「そんなことは言ってない」と文句を言います。人はいろんな思いで生きています。でも本当は生きていたいものなのです。安全だから死にたいと言い、悪いと死ぬよという。そんなものかもしれません。
 これから皆さんは社会という大海原に出て行かれます。順調にゆく者もいれば大不調に陥る人もいると思います。そんなときは、可もあれば不可もあると割り切って乗り越えてください。
 最後になりますが、先生方、保護者の皆さん、本日は誠におめでとうございます。銀杏会はいつも皆さんを温かく見守っています。銀杏会で開いている、広報誌 銀杏やホームページも伴侶に加えていただければと思います。人生というゴールは一つではなくいくつもあり、さらに乗り越えていってほしいと思います。

東京都立神代高校銀杏会会長 藤森 精太郎


【2017年4月7日(金)入学式挨拶】

 皆さんご入学おめでとうございます。卒業生2万有余名を代表してご祝辞を述べさせていただきます。
 実は私も50数年前、皆さんと同じ新入生としてこの神代高校に入学しました。それから卒業と入学が繰り返し行われ、今日に至っております。皆さんが72期になられるわけですので、銀杏会も70年以上の歴史があるわけです。今、70年以上と申し上げたのには理由があります。72期というのは新制高校になってからの経緯でして、その前に女子高である高女の時代がありました。神代高校は女子高から出発しているのです。
 あまり昔の話をしても仕方ありませんので割愛しますが、1つだけ言わせてもらえれば、その時代は戦争が重くのしかかっていました。軍需工場に通い勤労奉仕に明け暮れ、卒業して行かざるを得ない時代でした。戦争が終わって教育制度が変わり、新制高校になって新しい教育生活が始まりました。そんな時代から72年、速いものです。皆さんがこれからどのような3年間を過ごされるかわかりませんが、今申し上げたように歴史ある高校生活の幕開けです。この神代高校の肝でもある、責任ある自由に基づいて精一杯楽しんでいただきたいものです。銀杏会はホームページや「銀杏」という広報誌を通じて皆さんとのコミュニケーションを図っております。特にホームページはその時々のニュースをタイムリーに提供しております。ぜひご覧になってください。「神代高校銀杏会」で検索できます。
 これから先輩たちが披露してくださる校歌は、作詞作曲ともに卒業生が作ったものです。「飛鳥の昔さながらに~」と歌われる中に、神代高校のおおらかさと厳しさが同居しております。ぜひしっかりとお聴き下さい。卒業生の中にはたくさんの著名人がいます。原子力規制委員の23期の石渡明さん、芥川賞作家18期の高橋三千綱さん、漫画家で「孤独のグルメ」の作者である29期久住昌之さん、女流プロ棋士の49期中倉宏美さん、同じくプロ棋士で女流王将を2期保持した63期香川愛美さん、最近ではケラケラというポップグループの女性ボ‐カリスト、メメさんなども含まれます。その他各界で大勢の方が活躍されています。これらの方も最初入学されたときは期待と不安が入り混じった思いだったことでしょう。
 この3年間を基礎として身につけ、新しい社会へのステップとして挑戦していっていただければと思います。現在、神代高校はリフォーム中です。真っ先に体育館が壊され、入学式も外部の施設を借りて行うなど、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの年まで続きます。その間、部活や勉強など落ち着かない日々が待っているかもしれませんが、皆さん1人1人の力で乗り越えていって欲しいと思います。銀杏会も協力いたします。そのような時期だからこそ、この高校に入って良かったと思えるような思い出をたくさん作って羽ばたいて行って下さい。
 最後になりましたがご父兄の皆さん、お子様のご入学、誠におめでとうございます。これからもどうぞお子さんたちを見守っていただきたく思います。教職員の皆さん、共に手を携えてすばらしい高校生活になりますことを願ってやみません。お互いに頑張りましょう。

東京都立神代高校銀杏会会長 藤森 精太郎


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